ガイドブック千夜一夜

ガイドブック千夜一夜その1

とるこのととと」というこのサイトの主なコンテンツは「情報型読み物」というコンセプトで作成してきた。行き着くところは「ガイドブック」である。

このコンセプトは1980年代後半から1990年代前半にかけてのLonely Planet社(以下LP)の出版物に影響を受けている部分が大きい。私が頻繁に旅行していた1990年代前半、東アジアからアフリカまでの各地で参考にしていたシリーズだ。

LP社の出版物は1973年、創業者であるTony Wheeler氏とパートナーのMaureen Wheeler氏が自ら旅した経験をもとにまとめたAcross Asia on the Cheapにはじまる。奥付などに紹介されているように、リビングテーブルで作業を進めたごく小規模な体制だった。まもなく他のライターも加わり対象とする地域も拡大されてゆくが、少人数で執筆、編集してゆくスタイルは1990年代はじめまで維持されていたようだ。

現地での取材は「原理主義的」なまでに重視されていて期間も長い。LPのガイドブックを参考にした旅行の目的地ではライターの顔見知りも大勢いたし、本人に出会うことも幾度かあった。旅行者からも情報を受け付けるが、そのまま掲載されることはなく、対象地をくまなく歩いた彼らによって編集されたり、本文にフィードバックされた。

概して「あくの強そうな」ライターぞろいであり、記述にはそれなりに偏りもみられた。中には食べ物の嗜好が合わないタイトルもあったり、ライターの得意不得意による事実誤認を発見することもあった。しかし、これらのことはかえって視点をわかりやすくし、読者が情報を修正して利用することを容易にしていた面もあった。

必ずしも明示されているとは限らないものの、一貫した視点をもとに情報を提供した読み物がここで想定している「ガイドブック」である。地域を知るということ-地域研究-の作業はガイドブックを作ることから始まる。

2003.5.28